酷く間延びのする授業も終わり、飛鳥は軽く伸びをした
眠いわけでも、つまらないわけでもなかったが流石に疲れたのだ

「ねーねー!これからどっか遊びに行こうよ〜!!」
さっきまで大口を開けて寝ていた某幼馴染に、面白くなさそうな視線を向け
止めとくとだけ言葉を紡ぐ
「そんな事言わないでさ〜!結菜と琴音も行くってのよ?女の子三人も連れて歩けるなんて
幸せものだぞ!!」

いやそもそも「女の子」と定義して良いのかお前の場合
楽しそうに笑う一之瀬に、そう突っ込めるはずも無くとりあえず溜息を吐いた
言ったらきっと殴られるだけじゃ済まないだろう
「技」を食らうのは遠慮したい
「やっぱり止めとく」
「え〜?付き合い悪いなあ〜イナミン〜!」
「だから俺は……」
「じゃーんっ!!!」

さらに誘おうとする一之瀬と断る体勢の飛鳥の間に突然傘が生えた
しばし
目を点にする二人

生えて来たのが「傘+人」だと認識した所で、飛鳥は眉を寄せ軽く傘を小突く
「その登場の仕方はどうにかしろ、真田」
「えへへ〜!二人とも遅いから迎えに来たのだー!!」
満面の笑顔で傘を振り回す少女は可愛いと言うより、第二の市之瀬への不安を感じさせる
このままでは、否定するタイミングを逃して連れて行かれるかもしれない
飛鳥は先手必勝とばかりに口を開いた

「だから俺は行かないって!」
ぴたりと傘を振り回す手を止め、真田が見上げてきた
キョトンとした、酷く不思議そうな顔で
「どうしてえ〜?琴と皆と一緒に行くの嫌なの〜?」
「いや、お前らと一緒に行くのが嫌って言うか……」
ほんの少しだけ言い難そうに視線をそらす
そうして、飛鳥は今後の騒動のタネになる言葉を意識するでもなく零した
「女って生き物が苦手なんだよな」

「…………」
「…………」
広がる沈黙。もう少しオブラートに包んで言葉を口にするべきだったかと
飛鳥が後悔した直後

真田琴音はとんでもないことを、とんでもなく大声で叫んだ

 

「じゃあイナミンって男が好きなんだ〜〜〜〜〜!!」


オブラート所ではない、そもそも口にするべきじゃなかったのだと
今更ながらに飛鳥は後悔した

 

――器に咲く花――

 

 

「――――というわけだ」
校庭の隅にある茂みの中で
座り込みながら事の経緯を説明し終えた飛鳥は溜息混じりに言葉を切った
同じように茂みの中腰を下ろしているのは
こちらの郷に来てから日の浅い月詠学院の面々だ

「なかなか面白い話になってるねえ〜イナミンの同級生は良い感性してるよ」
見つからないようにだろう、押さえた声で可笑しそうに京羅樹は笑う
「人事だと思って楽しそうだな、ラギー」
「そりゃあね」
「こちとら、じゃあ本命は誰なんだとあのお騒がせなメンツに追っかけ回されて不機嫌なんだ
『鹿跳』喰らわされたくなかったら、言葉を選べ」
本格的に機嫌が悪いらしい飛鳥に
京羅樹は、勘弁してくれとばかりに両の手を上げた
「ホント、機嫌が悪いねえ……」
「ふむ。しかし何でまた逃げるのに集められたのが私たちなのだ?」
考え込みつつも、そう口を開いたのは女性ながらも随分と男らしい鳳翔凛だ

「当り前だろう、あの馬鹿騒ぎに参加せず話が通じるヤツラと言ったらお前らくらいだろ?」

逃亡中の飛鳥が走り回りながら集めたのは
飛河薙、京羅樹崇志、鳳翔凛の三人
確かに冷静で、馬鹿騒ぎに参加しにくい面子と言えるだろう
「ったく、こっちの学園には、まともなヤツがほとんど居やがらねえからな……」
疲れたように溜息をつく飛鳥に薙は全くだと頷いた
「少し考えれば分かる事なのにな、お前も苦労してるんだな、イナミン」
「……は?」
薙の口から零れた信じられない言葉に飛鳥は思わす顔を上げる
こいつの口から「イナミン」……?
自分では変わった事は言っていないと思っているのだろう薙は不思議そうに首をかしげた

「……っとお、俺っちは用事を思い出し……」
「待てコラ」
いそいそとその場から離れようとした京羅樹の肩を爽やかな笑顔のまま飛鳥が掴む
そこに青筋が追加されているのはご愛嬌だ
「お前だな?いたいけな天然小僧に、いらん知識を与えて汚染してやがるのは」
「汚染だなんて人聞きの悪いvお友達を作れるようにフランクなアドバイスをしてるだけだろ♪」
「本気で言ってるようなら刺すぞ?ラギー」

満面の笑顔であるのに、どこまでもどす黒いオーラを立ち込めて飛鳥はそう言った
そうなってしまえば、毎回の事「功労者」である飛鳥に叶うわけが無い
素直に謝ってしまうのが一番と、京羅樹は頭を下げた
こういう時の変わり身の速さは見事だなと思いつつ凛は溜息をつく
「馬鹿な問答をしてる場合じゃないのだろう?で、何か考えはあるのか?」
話を戻してやれば
元が賢い飛鳥は、そうだったと掴んでいた京羅樹の襟首から手を離した
「とりあえずは学院の外に出たい。元からヤツラ同じネタで長い間騒がねえから、夜まで外に居れば
飽きるだろ」
馬鹿ばっかだし
「……そ、そうか。じゃあ私達が手伝うのは脱出の手はずか」
仲間にたいするその言い方はどうかと凛は思ったがあえて追求するのは止めておいた
たぶん聞いても理解出来ないと思われたからだ
「それにしても人数が少ないんじゃないか?皆、君を捕まえるつもりなら出入り口にだって見張りくらいは立つだろう?」
「そうだよなあ……あ、あの総代さんは?あの人ならキチンと話聞いてくれるんじゃない?」
薙の言葉に、うんうんと頷いていた京羅樹がいい考えが浮かんだとばかりに顔を上げる

しかし飛鳥は眉を寄せ顔を横に振った
「あいつは駄目だ」
「どうしてよ?」
真面目で頭がよく機転が利く総代なら、協力しこそすれ馬鹿騒ぎには加わらないのに
飛鳥の考えが分からない京羅樹に
しばし考えた後、飛鳥は答えた
「俺が今追われてる理由が理由だ。アイツと一緒に行動して、勘違いされたらアイツに申し訳が立たないだろうが」

ちょっと待て、そう言う意味では俺っち達も同じだろうよ

と突っ込む勇気が京羅樹にあるわけも無く
ただ、薙と凛と視線を交わらせ小さく頷いた。
結局の所、本命は総代・九条 綾人その人なわけなのだなと
腐ってもペンタファング、意思疎通はお手の物だ
「まあ、どうにかなるだろ?お前ら仲間の中でもレギュラーでレベル高いし」
当の九条以外なら、すでにどうでも良いらしい主人公(エセ)我らが伊波飛鳥は
少しばかり茂みから顔を出し辺りをうかがった
今の所、敵(失礼)は見当たらない
逃げるなら今だとも思えたが、何故だか嫌な予感もする
嵐の前の静けさ……そういった言葉が頭をよぎった

「じゃ―――――んっ!!イナミンはっけーんっ!!!!」
「っぎゃ――――――!!!!!」(滝汗)

嵐は唐突に現れ周りの迷惑など考えず吹き荒れる
反射的に悲鳴を上げながら、己の予感の正しさに飛鳥はなんだか泣きたくなった
「お〜〜〜〜い!!イナミン見つけたよ〜〜〜〜〜〜!!!!」
「お!琴偉いぞー!!よーしイナミン覚悟しろよっ!!」
「はーははは!この宝蔵院に任せておけば、小童の一人や二人軽いわい!」
「よっしゃーv何やようわからんけどお縄を頂戴するで!」
けたたましい叫び声の後、一体どこに潜んでいたのか
一之瀬、宝蔵院、御神が飛び出す
やはり探す場所が学校だと限定されてる分見つかる可能性はかなり高い
「ちっ…!逃げるぞ、おまえら!!」
一之瀬に正拳突きを叩き込まれるのを、すんでで避け飛鳥は身をひるがえした
「技とは穏やかじゃないねえ……」
飛鳥に並びながら京羅樹は口笛を吹く
「しかし手加減していたのでは伊波は捕まらんだろうからな、当然だろう」
続けられた凛の言葉に飛鳥は再び溜息をつく
「生け捕りに出来れば何でも良いのかあいつら……」

鬼ごっこと何か勘違いしてないか?
そう思いつつ背後を振り返れば、そりゃもう楽しそうに自分達を追いかけてくる集団
ああもう何で俺この学院入っちゃったんだろ
根本的な原点に立ち返りたくすらなる、どうでもいいがゆえにどうしようもないこの現状
学校の裏手の木々が立ち並ぶ茂みに差し掛かった時
飛鳥は上を見上げた
「――――…もしかしたら……」
「何か名案でもあるのか?」
薙が釣られて上を見上げたが分からないといった風に飛鳥を見やる
「よし。薙、ラギー、凛、協力頼む」
「分かった」
「はいはいっと。結局付き合う羽目になったんだ、何すれば言いわけ?」
「了解した」

飛鳥の話は、実に単純なものだった
前を走るモノを追いかける事に夢中になっている馬鹿ども(酷)があいてなら、
囮を立てて自分は隠れていれば良い
単純かつ今自分たちを追いかけてきているヤツラならまず引っ掛かりそうな手だ
「合図したら俺が目くらましに『鹿跳』を呼ぶ。それが消えるか消えないかになったら
お前ら全員がバラバラの方向に逃げてくれれば良い」
少しばかり歩を緩め、魂神を呼ぶための精神集中をはじめる
「あいつらの事だ、俺を含めバラバラに逃げたと思うだろ。俺は木の上に隠れてほとぼりが冷めるのを待つさ」

言い終わるか終らないか、その間際
けたたましい音と、眩しいまでの閃光が辺りを包んだ
攻撃をするためではなく、目くらましのためだけに呼ばれた鹿跳は、大きくいななくと
何事もなかったかのように姿を消す
予定は問題なく遂行された

「え?あれ?イナミンの魂神不発?」
「にゃはは〜v失敗、しっぱ〜い♪よーしつっかまえるぞ〜!!」
三者三様に逃げていった後を追い
己が隠れている木の下を駆け抜けていく一之瀬達を眺めながら飛鳥は安堵の溜息を漏らした
あの三人には悪いが、とりあえずこれで見つかる事は無いだろう

「あとで礼を言っとかねとな……」
太い樹の幹に背中をあずけ、走りながら喋っていたお陰で乱れていた呼吸を整える
そうして学院の方に目を向けた時
二階の窓、そう丁度視線が並ぶ場所、彼と目が合った
「っ!?」
思わず木から転げ落ちそうになったのを、飛鳥はどうにか踏みとどまる
キイと乾いた音をたて窓が開き
彼……総代・九条綾人は不思議そうに首をかしげた
「何してるんだ?飛鳥」
「うわ、しーっ!今追われてるんだ、静かに頼む!!」(小声)
必死な様子の飛鳥に、どうやら何か思い当たったのか
九条はああと頷き今度は手を伸ばした
「この部屋に隠れてるといい、ここは俺以外滅多に来ないから」
ふわりと笑って促される言葉に逆らう理由もなく
飛鳥は悪いとだけ言って綾人の手を取り、音を立てないように床に着地した

「災難だな」
「俺が木の上にいた理由はお見通しなのか?」
「結菜からな。一之瀬達に追い掛け回されてるそうじゃないか」
楽しそうにくつくつと笑う九条に、飛鳥は溜息をつく
「笑い事じゃないぞ、綾人……逃げるこっちの身にもなってみろ「技」まで使いやがって……」
「それだけ気になったという事だろう?追い掛け回された理由は……確か『本命は誰か?』だったか?」
「ぐっ……!?」
あいつらまさか、言いふらしながら俺の事探してたんじゃあるまいな
とは思っていたが、どうやら事実らしい
みてろよ、次の戦闘中(殺意)

「で、いるのか?本命とやらは」
「はあ?」
意識を次の戦闘中に飛ばしていた飛鳥はマヌケな声を上げた
「興味はあるんだ。良ければ教えてくれ、安心しろ誰にも言わないさ」
たぶん書類でも整理してたのだろう
それを机の上に置き、興味深そうに九条は飛鳥の顔を覗き込んだ

「……あー……」

言えるはずが無い
というか言っても構わないが、この流れで言うのは何かはばかられる
視線を彷徨わせれば、九条は笑いながら口を開いた

「一之瀬かい?」
「死んでもごめんだ、あいつだけはっ……!!!」

……幼馴染だと言うのにえらい言われようである(合掌)

「じゃあ…よく一緒に居る鳳翔かな?」
「違うって、あいつはそんなんじゃない!!」

それじゃあ……とさらに続けようとした九条を飛鳥はイライラしたように睨みつけた
他の人間を好きなんじゃないかと考えられるのも嫌だった

「俺が好きなのはっ――――――!」

 

 

 

 

 

ドバキィッ!!!!!!!

「イナミンはっけ―――――――んっ!!!!!!!!!!!」
「ぎゃ――――――――――!!!!!!!!」(またか!)
扉を半壊させんが勢いで飛び込んできた、生物に飛鳥は反応が遅れ、がっしりと腰を捕まれる
「は、離せ!一之瀬ッ!!!!」
女に触られるのが嫌いな飛鳥は、どうにかして拘束から逃れようとするが
さすがは格闘娘、ビクともしない
「はははー!!イナミン、声でかいでぇ?すぐに場所分かったわ♪」
次々と部屋に入ってくる人物

……どうやら逃げるのは不可能のようだ

「ふっふっふーvやっと捕まえたわよ〜」
「捕まえたー!!」
諸悪の根源である二人を前にして飛鳥は現実逃避をしたくなった
「んで?どうしてこいつを捕まえたかったんじゃ?」

宝蔵院の言葉に諸悪の根源ははたと顔を見合わせる
「え〜と…」
「う〜んと……」
「…………追いかけるのに夢中で忘れたんかい、お前ら」
頭を抱え込み悩む二人に、とりあえず突っ込みをいれ飛鳥は笑った
どうやら忘れてもらえたらしい
「あ!!!思い出した!!」
「何ッ!??」(汗)
「一緒に、遊びに行こうって言ってたんだー!!」
「あ〜!!そうだったー!!」

……いい具合に抜けている

「お、遊びに行くんやったら付き合うで〜v」
「よしワシも付いて行くぞ!!」

ああ、まったく。
最初からこうすれば良かったのか

「んじゃ、一緒に行ってやる。行くぞ一之瀬」
「おっvさっきとはうって変わってノリがいいじゃ〜ん」
わいわいと楽しそうなメンツに、自分のために骨を追ってくれた三人を加わえ
ほんの少し驚いていた総代も加え

皆で遊びに行く事にした


騒ぎは大きく

終わりは静かに

ただ遊びに向かった先でも平和かと聞かれればそうでもない日常が待っている

そんな日だった

 

 

 

 

 

END

 


□□□□□□□□□

何これ?(聞くなよ)
オールキャラのギャグにしようと思って撃沈です。ギャグは向かないなあ……
というか一周しかしてないので、イマイチ皆の喋り方が怪しく適当です
間違ってたらごめんなさい。
お気に入りのキャラが別人になってたらごめんなさい
うちのイナミンは、一之瀬と琴音が本気で苦手です。こんな彼ですが仲良くしてやってください(ぺこり)
ただ、追いかけっこが書きたかっただけなんだ……(言い訳)


ではでは、ここまで読んでくださってありがとうございますv


 

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