――戦闘中アレコレその2――   〜蓮の葉ジャンプについて〜

 

 


それは、とてもとても天気が良い日のこと

運も手伝ってか、大抵ずぶ濡れになってしまう蓮の葉ジャンプで
アティは信じられないほどの好タイムをはじき出した

「やりましたよっ♪パナシェくんvv」
いつもいつも人懐っこくて自分が葉から落ちると心配してくれていた
パナシェに、誇るようにガッツポーズを見せる
丸いキラキラした目で見上げ、パナシェは自分のことのように
嬉しそうに笑った
「すごいや!先生!!!」

そうして、ゴソゴソと「何か」を取り出す
「はいっ!コレ僕の宝物!!大事にしてね♪」

 

その「何か」から全ては始まった……

 

 

 

 

「ホント、今日はいい天気よねぇ……」
スカーレルは窓から見える青い空を見上げながら呟いた
いつもなら食事を並べる場所に、ノートやらなにやらを広げ、唸っているミスミと
それを妙な迫力のある笑顔で眺めているヤードを除けば
本当にいつも通りの、のどかな午後だ

「この二人、なんでわざわざ海賊船にまで来て勉強してるのよ?」
「ああ、気分転換に場所を変えたんだと」

スカーレルと同じくカイルが暇そうに伸びをしながら答えた
「ヤードって意外と、ああいう事になると凝るタイプだったのねえ…知らなかったわ〜」
「戦闘、イベント、全てにおいて影が薄いからなーここぞとばかりにウサをはらしてんだろ」


「カイルさん?」
ヤードには聞こえないよう、小声でぼやいたカイルだったが
そこは天性の大声男。聞こえてないはずが無い

「ハ、ハイ…?」
「次、余計な事言うようだったら、こちらにも考えがありますから」
微笑を浮かべている辺りが、必要以上に恐ろしい。

図星か……
スカーレルは、心の底からそう思った
思うだけに留めておく辺りが、彼が周到なゆえんだろう
カイルもスカーレルもヤードも、そしてミスミも
こんなやり取りで今日一日が過ぎていくのだろうと、そう信じてうたがわなかった

「い…言ったらダークブリンガーか…?」
「ヤードもそこまで鬼じゃないでしょ……せいぜいダークレギオンのHPスティールくらいじゃない?」
「その方が、むしろヘビの生殺しっぽくて嫌だな」


ボソボソと先程より、さらに落とした声音で話をしていた時
けたたましい足音が廊下から聞こえ、数分とたたずに扉が開かれた

思いっきり叩きつけるように開いた扉に、部屋にいた一同は視線をそちらに向ける
そして、現れた人物に驚いたように声を上げた

「センセ?」

「アティじゃねえか!」

「アティ?」

「アティさん…?」

誰一人として、彼女がこんな風に、扉を乱暴に開けるのは見たことが無い
何事かあったのかと、皆それ以上何も言えずにいると
アティは何も言わないままに
スカーレルの前にまで早足で歩いていき……

かばっ!!

抱きついた

「え…?」
「スカーレル、スカーレルっ!!わ、私どうしましょうっ…!!まさかこんな事になるなんて
思わなかったんですっ!!」
一瞬何事かと目を見開いたスカーレルだったが
すぐ落ち着いて、半分泣きながら何かを訴えようとするアティの背中を軽く叩いた
「とりあえず落ち着きなさいな…センセ」
「私、キチンと教えられる事は教えてきたつもりだったのに…!!」

どうにかして落ち着かせようとスカーレルはアティに視線を合わせながらニコリと笑う
「ちゃんと聞いてるわ、どうしたのセンセ」
どうにか言葉を紡ごうとしていたアティは、スカーレルの言葉に
落ち着こうと、数度深呼吸をした


面白くないのは当然外野だ

すでに腹を立てるのも馬鹿らしいと思ったのか、度が過ぎたのか
妙に清々しい笑顔をカイルは浮かべている
「………なあ、ヤード。ちょっとダークブリンガー貸してくんねえ?」
「カイルさん……いつか馬にけられて死にますよ?」
溜息交じりのヤードに、ミスミが楽しそうに笑いながら追い討ちをかけた

「それに主の魔法力では効果も期待できぬであろ?」

事実とは時に残酷なものである

 

カイルが、ミスミに撃沈された頃
落ち着いたらしいアティが、この経緯をポツリ、ポツリと話しだした

「今日……パナシェくんに誘われて、蓮の葉ジャンプに挑戦したんです」
まあ、今日はいい天気だからと、皆頷いた

「それで凄く早く渡る事が出来て、ご褒美だってパナシェくんから彼の宝物を貰ったんです」
「良い話じゃねえか?それがとうし――」

アティは手を震わせながら荷物から「ソレ」を取り出した
「コレなんですけど……」

 

「……………………」

彼女の手に乗っていたのは
ワラ人形だった
人を呪い殺す為に使われると言う呪術の道具の一つで
今彼女の手の上に置かれている物には、ご丁寧に古びた釘がさされていた
まるで使い込まれていそうな辺りが
また皆の沈黙を誘った


「……私、教育の仕方を何か間違えたんでしょうか……」
何か辛い事でもあったかのように、しばし眉間に手を当て考え込んでいたスカーレルだったが
落ち込むアティを見かねて、どうにか言葉を捜す
「セ…センセのせいじゃないわよ。ホラ、三つ子の魂百までって言うじゃない?」
パナシェは三つの頃からわら人形持ちですか?スカーレル

「それだけじゃ無いんです…!!」


それだけじゃ無いのか――――――――!!!!!!
その場にいた全員の心が一つになった!


「スバル君が…!!」
「何!?スバルがどうしたのじゃ…!アティ」

ゴソゴソとアティが荷物から取り出したものに一同は今度こそ言葉を無くした

 

スルメと龍殺し(お酒)

 

「これをご褒美だってくれたんです」

「どこののんべえだよ」
カイルが引きつった笑顔を浮かべながらそういうと、ヤードもそれに答える
「もしかしたら、シルターンには子供のオヤツにはスルメという文化があるのかもしれませんね」
「ないぞ?」
「それに、さすがにお酒は無いわよねぇ……」

ここの島の子供って……と複数の人間が思ったが口には出さず
深い溜息をついた
「後で、スバルにはよ〜く話を聞かんとな……」
ふふふと、笑いながら酒とスルメを握り締める姿を
彼女を主と仰ぐ例の忍びが見たら、もしかしたら落ち込むかもしれないな……

カイルは、そんな事を考えながらワラ人形を手にとった
仰々しい雰囲気をかもし出してはいる物の、果たしてコレは本当に効くのだろうか
キョロキョロと手近な人間を探すフリをして、カイルは狙い済ましたかのように
アティの傍にたたずむ
黒髪の青年の髪を一本ちょうだいした

「痛っ…!何するのよ!!カイル!!!」
「まあまあ、このワラ人形が本当に効くのか試してみようかと思ってよ♪」

髪を人形の中に押し込み、カイルはそれを柱に当てた
そして一体いつの間に用意したのか、手にはかなづちが握られている

カーンッ!!!!!!


「ぐっ…!!」
突然、スカーレルは胸を抑えてうずくまる
間違いなく効いているようだ


「おお♪効いてるじゃねえか!すげえなコレ」

カーン!カーン!!カーン!!!


「ちょ…いい…加減にしなさいよ……カイ…ル……」

 

心の底から楽しそうなカイルを止める気さえ起きずヤードは遠くを眺めた
ミスミは感心したようにその様子を傍観者として眺めている
「楽しそうだのぉ…カイルは」
「日ごろの恨みってヤツでしょう……」


「わはははは!コレが俺様の実力だ!思い知ったか、スカーレル♪」


ワラ人形が実力だなんて悲しくないのか、あんた
と、突っ込みたいだろうに
スカーレルは苦しそうに息を吐き出しながら膝をついたままだった
アティはと言えば、どうして良いのか分からず、ただオロオロとスカーレルを見つめている
「ス、スカーレル……プラーマ召喚しましょうか?」
心配そうな少女に、スカーレルはどうにか笑顔を作って見せた

「大丈夫よ、センセ……だからナックルキティ憑依させてもらえるかしら?」
「は、はいっ!!」
アティは、スカーレルの役に立てるのが嬉しいのか
すっくと立ち上がり速やかに、ナックルキティを召喚するのだった

 

 

 

その後、カイルの身に何が起こったのかを知るものはいない

 


ただ、その場に居合わせた
召喚師と鬼姫は、こう話していたと言う


「知っておるか?わらわの国では『人を呪わば穴二つ』という格言があるのじゃ……」

「実例まであって凄く分かりやすいですね…勉強になりました……」

 

 

 


END


□□□□□□□□□□

すでに戦闘から外れましたね、すみません(汗)
実際、パナシェはワラ人形をくれるそうですねえ……私は知らないんですけど
友人が、やったらしくて
その小説を書いて欲しいと頼まれましたので書いてみました。
いかがでしょう?
少しずつ私のカイルの扱いが酷くなってきているような気がするのは
気のせいでしょうかねえ??

それでは、ここまで呼んで頂いてありがとうございました…!!!
スカアティっぽく無いですが、私の中ではスカアティなのですよ…!!!!

 

 

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