一年にたった一度

逢う事を許されるなら幸せ?

それだけしか……許されないのだとしても

 


――空を見る――

 

 

大海原で見る空は、ただ広い
さえぎるものが何一つ無いためなのか、それとも夜ゆえに
空と海とを隔てる水平線が霞むせいかもしれなかった

空には星が瞬き

海には波が踊る


「そうして2人は逢えなくなったんですけど……」
甲板に腰を下ろし、空を眺めながらおとぎ話を語る少女を眺めながら
スカーレルは頷いた
優しい青の瞳には星が映る
それは本当の夜空よりも、月に踊る波間よりも魅力的に思えた

「泣きくれる二人を可哀想に思ったのか、一年に一度だけ…逢う事を許してくれたそうです」
渡れるはずも無い星の川を挟んで
引き裂かれた恋人同士
「その2人が逢えるのが今日なわけね」
「ええ!晴れてよかったですv」
ニコニコと空を眺めるアティは
満足そうに声を弾ませる
その言葉の意味を理解しかねて、スカーレルは首をかしげた
「晴れてないと駄目なの?」
「ええ、雨が降ると川の水かさが増えて渡れなくなるんです」
「それは……
天の川が果たして、増水するのかどうかは置いておいたとしても
それは、あんまりだろうとスカーレルは思う
「年に一度しか逢えないのに、そんな理由で逢えなくなるの……すごい話だわねえ」
自分なら信じられない


「どんな気持ちなんでしょうね、一年ぶりに逢う…大好きな人を見た時って」

嬉しいんでしょうか

楽しいんでしょうか

それとも、すごく切ないんでしょうか

歌うように
紡がれるアティの予想は、可愛らしいものだと思った
だけど
スカーレルはそう予想はしない

逢えれば、別れが辛くなる
それこそ逢えた事を後悔するほどに
逢って抱きしめても、すぐ掻き消える幻
一年に一度しか逢えないなら……逢わずにいた方が、幸せだろう
長い間待たせなければいけないのなら
待ってくれる事を望まない方がいい


「先生は…もし大好きな人に一年に一度しか逢えないって言われたら……どうする?」
自分なら
きっと逢わない
それはお互いつらいものだから
質問として口から出たはずの言葉は、どこまでも自己完結はしていた

「空を、見ます」

だから
アティの言葉の意味がすぐには分からなかった

重さを感じさせぬほど軽やかに立ち上がり
アティは甲板を数歩歩き振り向く
「私は、大好きな人とよく空を見上げましたから」

笑顔には影はなく

「月を見上げた時、その人に逢えます」

夜だと言うのに…眩しかった

「私をしかってくれた時、励ましてくれた時、褒めてくれた時……全部、そこにありますから」
仮定で聞いたと言うのに彼女は真剣に言葉を紡いでいる
「だから、逢える日まで待って…笑って逢いたいって思います」

それが分かるから
スカーレルは笑うしかなかった
「センセには敵わないわ」
「え…?何でですか?スカーレル私より強いじゃないですか」
負けましたとの意思表示に、両の手を持ち上げれば不思議そうに首をかしげる
分からないのなら、それでいい
その方が彼女らしいから

「ところでセンセv大好きな人ってだあれv」
「ええっ!?ひ、秘密ですよっ!!」
顔を真っ赤にするアティを覗き込みながら、心底楽しそうにスカーレルは笑った

 

一年に一度より、毎日逢えれば良いのに
そう願うけれど

もしアタシが待っていて欲しいって言ったら…貴女は待ってくれるかしら

ねえ、アティ

 

 


END

 


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突発七夕ネタサモ3ですv
つか、ただのバカップルです(滝汗)あれ?これって時間軸どこ!?
ゲームのED後でしょうか……つかそれなら誰が大好きだとか分かりそうなものですが
それとも分かっててからかってるわけですかスカさん…!

アティは、大好きな人を待つことは辛くても待てる子だと思います
たまに泣くかもですが
月を見上げて涙ながらにも笑っていて欲しいです
絶対笑顔で出迎えるんだって、心に思ってたのに本人を目の前にすると泣きじゃくるアティ先生希望
あああ!可愛い!!(ときめき)
スカさんも待てそうだけど、相手が辛いだろうからって希望を切り捨てそうな……
ええ、それも彼の優しさですね

それではここまで読んでくださってありがとうございました〜vv


2006 7,7

 

 

 


 

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