ゆるやかにゆるやかに、今日と言う時間は過ぎていく

「こんにちはー」
ノックの後に、続く少女特有の高く優しい声音にカインはゆるく手を上げた
「やあ、いらっしゃい」
「…げ」
「おやおや、随分な挨拶だねえ」
中に居る人物を認めたとたん、分かりやすいまでに表情を引きつらせて一歩後ずさる
そんな少女の態度を気にしているわけでもないだろうに困ったようにカインは肩をすくめた
「あんたには良い思い出がないんだから仕方ないじゃない!」
相手の機嫌を伺う事も無く
真っ直ぐに自分の意見と思いを告げる少女
「それは光栄だ」
そんな彼女の物言いが可笑しくて、カインはくすくすと声を立てて笑う
そうして
「ああ、そこに座ると良いよ。お茶がもうすぐ入るから」
当然のことのように自分の目の前の椅子を勧めた


「い、良いわよお茶なんて……それより…」
「フィールなら居ないよ?」
視線を泳がせながら言葉を選ぼうとするジュジュにカインはあっさりと答えを示す
彼女がここに尋ねてくる理由は面白い事に一つだから
それがまた興味深い
「朝からドロシーと町に出てるよ、夕方くらいにならないと帰らないかなあ」
「…そう、じゃあ帰るわ」
分かりやすいまでに肩を落とし背を向けようとする少女に
今日の日のようにゆるやかな声がかけられる
「お茶でも飲んでいきなさいって」
「いいってば」
「もう2人分の葉っぱ蒸らしちゃったんだよね……」
「私が来てから、一分も立ってないって言うのにどうやって2人分も蒸らせるのよ!!」
「エテリアに聞いてたからv」
「……」

ワザとだろうに困ったなあと漏らすカインに、ジュジュは盛大に溜息をついて扉を閉じた
存在は部屋の中に留まったまま
面倒くさいという事を隠そうともせず、乱暴に椅子の背を引き腰掛ける
付き合ってあげるのだと
不本意さを露にする態度は微笑ましくこそあれ、不快感には繋がらない
カインは穏やかに笑ったまま白い陶器に琥珀色の液体を注いだ
「どうぞ」
暖められたカップは
温度を逃がすことなく香りだけを運ぶ
勧められるままに紅茶を口に運び、彼女はその香りに微かに微笑んだ
優しくて温かい、甘くは無いのに柔らかい香りだと思った


惜しむように少しずつ口に運んでいる途中
「……何見てんのよ」
気付かなくて良い事に気付いてしまった
しかして目の前の人間の存在を一瞬でも忘れてしまったのは、彼女にとって失敗だったのかもしれない
「ん?可愛いなと」
さらりと、何の悪気も無く
「やっぱり女の子は笑ってるのが一番だね」
自分より年上であるカテナは笑う
余った紅茶を一気に飲み干し、ごちそうさまと叩きつけて
「もうあんたと一緒にお茶なんて飲むもんですか――っ!!!!」
甲高い宣言なんだか悲鳴なんだかを上げながら、彼女は駆けて行った


その時少女は、今この時にレクスを持ち出してこなかった事を本気で後悔していたという

 

 

―――――――――――

カイン+ジュジュ

少し微妙…かな?というかカインさんがセクハラくさいです
何だかんだで、ジュジュとフィール、ドロシーの事は可愛くて仕方ないお父さん
きっと素直に落ち込んだジュジュを励ましてあげようと思っただけなんですよ
レクスを持ち出しても
カインさんには怪我一つさせられないに一票

 

 

無音の空間を不快だと思わない人物はそうそうは居ない
特に複数の存在があるなら
どちらかが口を開かねばと思うもの
それが無いのは
お互いの信頼関係ゆえか
それともそういう事自体を考えていないゆえなのか
この場合は後者であろう、他の存在がここに介入するならばそう思うはずだった

「……」
「……」
ヴィティスは今日中に片付けなければいけない書類の最後の一枚に目を通し
息を吐いた
顔を上げれば、もくもくと作業をこなすアルミラが目に入る
ああ…そういえば居たな
失礼な事ではあるはずだが、それほどまでに存在を忘れていた
今だ陽が浅い時間から傾くまでの間
ほんの一言すら会話は無かった
彼女の癖なのかペンを走らせる音も書類を移動する音も酷く静かで、耳につかなかったせいもあるんだろう
書類をそろえ、向こうも終ったらしく
一息をつき
見つめる視線に気付いたかのように顔を向けた
「いつから居た?ヴィティス」
「最初からだと記憶している。仕事を始めたのは同時刻であったと思うが」
「そうか、静かだから居ないものだと思っていた」
「君の同僚と一緒にしてもらっては困る」

確かにそうだとアルミラは笑い
ヴィティスに近付き、チェックの終った資料を差し出した
それを受け取り確認もせずに片付ける
彼女に限ってミスは無い
そう知るがゆえの行動が好ましかったのだろう、アルミラは美しい口元を優美に微笑ませた
「確認はしないのか」
「する必要のある人物と無い人物は分かっているつもりだ」
「ほう…?差別か?」
「事実だ」
「確かにレオンやジュジュには任せられんか…」
くつくつと笑うアルミラに、表情こそ変えぬものの微かな和やかさを滲ませヴィティスは頷く
「カインはどうだ?」
「無理だな、あいつにはデスクワークは向かない。面白みの無い物はすぐに飽きる子供のようなものだ」
親友に対する言葉は辛辣
それでいて親しみを滲ませる
「それではその息子のフィールにも向かないか」
「……さてな、考えた事が無い」
カテナの問題や仕事に、カインの息子とは言えあの少年を巻き込むのをヴィティスは良しとしない
「あれは気も利くし真面目だ、役には立つと思うが?」
「部外者を巻き込むのは好ましくは無い」
「当事者の間違いだろう」
カテナを救うことに、一番心を砕いていてくれたのは彼なのだから
「それでも、だ。私達で解決できる仕事をさせる必要は無い」
「さすがに頭が固いな、おまえは」
「君がそれほどに柔軟だとは思わなかった」

話は終わりだと切り上げようとした時
ぽつりとアルミラは口にした
その言葉の決定的な威力を知っているからか、席を立とうとしたヴィティスに対しての焦りは無い
「あの子が手伝いたいと言っていてもか?」
「……」
ぴたと、動きを止め、漏れるのは小さな溜息
「それを最初に言うべきではないのかね?」
「すまない、少しばかり面白くてな」
「さすがあれの同僚だ、底意地が悪い」
「伝えておこう」

返事は分かったと、アルミラはヴィティスを残して部屋の扉に手をかけた
「明日は私が手伝わずとも済みそうだな」


―――――――――――――――

ヴィティス+アルミラ

こう…頭の良い会話書きたかったんだけど、あれ?全然頭は良くないよ匠さん…!
2人は世間話をしていてもこんな感じです
短的なやり取り、微妙に攻撃的。でも2人は楽しいらしい
たぶん一緒に居ても、全くお互いに苦痛を感じない二人だと思う、いっそ空気
フィールとヴィティスはカプじゃない(つもり;)
でも相変わらず、私の書くヴィティスはフィールには甘いというか弱いです

 

 

「ねえねえ!あとこっちのを運んでほしいの!!」
ぱたぱたと駆けていく少女に、ガルムは何故こうなったのかと
雲ひとつ無い晴天の空を仰いだ

そもそもがヴィティスの付き合いでここに来たはずだが、当の本人と言えば
カインと、重要なのかそうでないのか良く分からない話で話し込み
手持ち無沙汰に出された茶を口にしていれば
「ガルムさん、ガルムさん」
小さく愛らしい少女が、にこにこと笑いながら傍によってきた
「…何だ」
子供の相手は苦手だ
穏やかな喋りなど出来るはずもないし、この顔のせいかすぐに泣くのだから
この神々の子である「ドロシー」が例外である事は承知していた
「今、手は空いてますか?」
「……空いてはいる」
そもそもが暇だと言っても過言は無い
「じゃあ少し手伝って欲しいんですけど良いですか?」
「構わん。どうせ暇だ」
自分に頼むのだから力仕事なのだろう
そう思い導かれた先、確かに力仕事ではあったが彼の予想とは大分違っていた

きゃいきゃいと周りを行き来する子供達
唖然としたと同時に頭が痛い
もしかしなくても……
「今日はこのお兄さんが手伝ってくれるのよ」
にこやかに、その中では一番年上になるであろうドロシーはガルムの目の前が真っ暗になるような事を言ってのけた
「お願いしますは?」
『おねがいしますっ!!』
この状況を、打破する方法は少なくともガルムには思いつかなかった
「これをね、あっちの上にのせたいの」
平和になった証拠だろう
子供達が自由に遊べる場所を作ろうと、子供達自身が創意工夫をするのは確かに良い事だ
「…これで良いのか」
「うん!すごいねワンコさん!!」
「……ガルムだ」
小さい子供ゆえの無邪気さに腹を立てるわけにもいかず、耳だけを力なく垂れさせながら
丸太やら、太い麻紐やらを
拙い設計図を難しい顔をして眺める子供達の言う通りに移動していった
「次はここをしばってよ!」
「分かった」
とりあえずあの神々の子は兎も角として、カインや小娘に見られたなら後々何を言われるのか分からない
手早く終らせてしまおうと黙々と作業を続けた

後少しで解放されそうだ
纏わりつく子供達の相手をしながら、やれやれとガルムは息をつく
「ねえ見て見て!わたしすごいでしょ!!」
完成が近いせいか、それとも子供元来の気質のせいか
作業より遊ぶ方にシフトした彼らを責める気は無かった、だが自慢げに誇らしげに笑う少女が立っていた場所に
「馬鹿か!?貴様は!落ちたらどうするつもりだ!!」
思わす声を荒げ
無理矢理に地面に下ろした
高さはガルムの身長を微かに超えるだろうと思われる見晴らし台
今だ手すりがついていないその場所は危険であるはずなのに
少女はそれだけでは飽きたらず、後ろ向きにかかとだけを出すなどという芸当をして見せていた
当然褒められた行為ではない
「……っえ…うえ」
怒鳴られた少女はきょとんとし、その直後に泣き始める
周りの子供達も、先程の騒がしさとはうって変わって静まり返った
不安そうに少女とガルムの顔を見比べて
ああ…だから子供は苦手なんだ
そう思い頭を抱えたくなったガルムの脇を
ドロシーがすり抜けた
そうして涙を流す少女と視線をあわせゆっくりと言葉を口にする
慰めるのだろう、とガルムは思った
幼子にはそれが一番の解決法だ
だが
「さっきのはミイが悪いのよ、ガルムさんは心配してくれただけ」
真剣に、諭すように少女は幼い少女に言葉を紡ぐ
「だから謝ろうね?」
こくんと頷く少女は今だ顔は真っ赤で泣いていたけれど
「……ごめんなさい、もうしません」
小さい小さい声で
ガルムからは後頭部しか見えなくなるくらいに深々と頭を下げて
「構わん、もうああいった事はしないならな」
それは酷くくすぐったいものだった

きゃあきゃあと、結局作業が終ってからも遊びにつき合わされながらガルムは首を傾げた
子供達と遊ぶドロシーはやはり、ただの子供だと思うのに
あの時見せた顔はまるで「母親」のようだったから

 

少しはなれた場所で、決して見られたくなかった2人に見られた事は
言わないであげたほうが彼の為かもしれない


――――――――――――――――――――――

ガルム+ドロシー

(と愉快な仲間達)って付けた方が良い気が(汗)
途中から果たして自分が何を書きたいのか分からなくなったので、半ば強制終了
そんなものをお礼に置くかなお姉さん
や、ほら子供嫌いそうだけど、子供に囲まれて愛されてるワンコさん可愛いじゃん?(じゃんって)
ドロシーはメインの中では一番子供だけど
すごく大人びた一面をもってそうな気がします。でもお母さんって言うよりお姉さん?
ミイって誰さと問われれば、可愛い妹のペットとしか(笑)

 

 

 

 


ぽたぽたぽたぽた

絶え間もなく床を濡らす水に、フィールは居たたまれない気持ちになる
服から髪から
どれほどの水気を含んでいるのか限りが無い
下手に動く事も出来ず、待っているようにと言付けられたままの場所で佇んでいれば
見事な水溜りになってしまう

階段を急ぎ足で下りてきた長身の青年は持って来た複数のタオルの内一枚をフィールに手渡す
ありがとうとそれを受け取って
とりあえず汚してしまった床を吹きはじめれば
「君が先だろう」
飽きれたように頭の上に、タオルがかけられた
声はかなり冷たい
いつもの彼に比べても、だいぶ

……やっぱり怒ってるのかなあ

そんな微かな変化が分かるようになったのは嬉しいが
怒ったままで居られるのは、少し寂しい
「ええと、ね。ぼくが外に出たときは小降りだったから大丈夫かなって思ったんだ」
言い訳を口にしても
ただ静かに長身の青年は見下ろしてくるだけで何も言わない
足元をどうにか拭きおえ、頭を乱暴に拭いて同じように服も軽く拭いていく
この場合拭くよりも着替えた方が早いような気はする
完全に水を吸ってしまい重くなる服はどうしようもない

一通り拭きおわってタオルをまとめようとした時、ふわともう一枚頭に被せられた
「ヴィ、ヴィティス?」
「風邪をひきたいのか?」
髪に染み込んだ水分を、タオルに吸い込ませ優しく首筋や顔を拭っていく
怒っている様子は変わらない
だけどその手は本当に優しくてタオル越しにでも手は温かい、それが嬉しくて思わず笑ってしまった
一通り拭かれた後、タオルを受け取ったヴィティスは
ついと風呂場を指差した
入るようにとのことなんだろう
「着替えは準備しておく、入りたまえ」
「あ、あのヴィティス!」
それに否はない
だけど事務的に対応しているヴィティスが少し遠い気がして
二階に戻りかけた背中に声をかけた

漏れるのは、小さな溜息

「言い訳なら身体を温めた後いくらでも聞く、今日帰るのは無理なのだから泊まって行くといい」
背を向けたまま向けられた言葉に
怒らせていたわけではないと気付き、分かったとフィールはホッとしたように笑った

 

 

――――――――――――――――――――

フィルヴィ♪

うんでも大した事無い(痛)相思相愛でラブラブが根底なんだと思ってください
ええきっと初夜後の話ですから
お泊りと言う時点で良かったねフィールみたいな(君はフィールを何だと思うよ)
台風が最近近く(もないけど)通ったので台風ネタ
会いに行く約束とかしてて、台風だから来ないだろうと思っていたヴィティスと
たぶん台風の目に入った辺りで「いけるかな?」と思っちゃったフィール!
子供だから会いたいと思ったら一直線です

そしてビックリしたものの会いに来てくれて嬉しい反面風邪をひくんじゃないかと
気が気じゃないヴィティス(笑)
とりあえず急いで行動を起こしていたら、怒っていると勘違いされるヴィティス(愛)
しかし綺麗に拭いてあげるより、とっとと風呂場に沈めた方が良いと思うよ、ヴィティス!
そうか…触りたかったんだね……野暮な事言って悪かったよ

 

 

 


 

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