ぱたぱたと

空気を揺らす軽快な音
屋根に、地面に、枝葉を広げる木々の葉に
音を奏でる事を望むよう
微かにならば心地良く、優しい音色になるだろうか

「まいったなあ…」
途方に暮れる、そういった表現が相応しい声を少年はあげる
両の手に抱えられたのは
家で待つ少女に頼まれた様々な品物
自分だけなら濡れて帰ることも考えように、紙袋であるそれを濡らして帰るのはさすがに忍びない
店先で止みはしないかと空を見上げても
白く重そうな雲は動く気配もない

どこかで傘は売ってなかったろうか
そう考えながら、ぼんやりと空を見上げていた少年は

ふと、差し出された紺の色に目を丸くする
「使うかね?」
高い位置から降る声に、空から視線を移動させれば
よく見知ったカテナの青年が立っていた

珍しい、こんな所で会うなんて
「こんにちは、ヴィティスさん」
「ああ、元気そうでなによりだ」
小さく会釈をすれば浅く頷いてそれに答える
挨拶が終った事で、今しがた彼が差し出してくれた藍色の傘を見た
開かれたままのそれからは、透明の雫が垂れ
今の今まで使われていた事は明らかだ

「ええ、と」
「雨で立ち往生していたわけではないのか?」
「そうなんだけど……ヴィティスさんはどうやって帰るの?」
一本しか傘はない
それを差し出すと言う事は、やはり一人は入れない
「私は濡れて困る物は持っていない」
端的に答えは返る
つまりは濡れて帰ると、目の前の青年は言っているのか
「……いや、やっぱりいいよ」
自分が傘を借りる事で、キチンと傘を持っている彼が濡れるのは嫌な気がした
「何故?」
意外そうだ
彼にしてみれば
濡れてしまえば困る物を持つ少年と何も持たない自分なら、自分が濡れても構わないんだろう
青年が素直に不思議に思ったように、少年も素直に言葉を紡ぐ
「あなたが濡れるのが嫌だから」
「……」

傘を手に、青年は考え込んでしまったようだった
ぱたぱたと紺に、跳ねる水音は優しい

「……なら」
考えて、答えは出たらしい
一度傘を引き、少年の隣に並んだ

「送ろう」
今度は断る理由はなかった
少しだけ驚いたけれど、笑って頷けば雨の中を歩き出す
自分より歩幅は広いはずなのに
合わせてくれているのが、少年には可笑しかった

「どうかしたか?フィール君」
「なんでもないよ」

ぱたぱたと
雨の音が心地良いのだと、ただ笑った

 

――

フィール+ヴィティス

普通に知り合いの2人を書いてみたかったのです
「ヴィティスさん」とか「フィール君」とかの呼び方は年齢差を感じてときめきます

 

 


この村に来た事に理由はあっても
そこに行く理由はなかった

頼まれた届け物を手渡し、村での用事を果たした彼はふと顔を上げる
ふわりと舞う光たち
人間たちは気付かずに行き来している
避けるでもなく
当たるでもなく
エテリア達は静かに舞って

興味を引いたのは大したことのない変化だ
いつもなら取りとめもなく舞う彼らが、流れを持ちそこにいる
エテリア達の気まぐれだろう
そう思いながら、流れをさかのぼってみる事にした
時間もあった
それにエテリアに何か問題があるなら人間に教えておかなければと思いもした
真面目すぎる彼にしてみれば当然の事で
だからたどり着いた先、ほとんど変化がないはずの顔をしかめるのも仕方のない話だろう

「やあ、こんにちは」
最初に声を上げたのは、銀色の髪をした青年だった
「君か?エテリアがいつもと違う動きをしている原因は」
「そうだよ」
端的に、それこそ頭痛すら感じそうなほどあっさりと青年は答える
「……」
「ワザとじゃないよ。生まれつき交感能力が高いせいかな…こうなるんだ」
微かに訪れた青年が不快感を感じたのに気付いたんだろう、緩やかに笑ったまま付け加えた
自分と同じか、そうでなくても微かに下か
エテリアが見えている時点でカテナだとは知れたが、年齢が分かりにくいのは
きっとこの青年本来の気質なんだろう

少年のようなのに、ひどく大人びた顔で笑う

「わざわざ足を運ばせて悪かったね、代わりに変わったモノを見せてあげるよ」
ついと手を伸ばし
エテリアに聞こえる程度だろう彼は唇に言葉をのせた
とたんに
現れるのは壁だろうか
視覚的に何もありはしないのに、目の前に現れたのは確かに壁だ
「……エテリアの結界、か?」
「そんなに大層なものじゃないよ、少しだけ前に進みづらくなるだけ」
「充分だろう。ここまでエテリアの力を借りられるカテナは、そうそうは居ない」
そう言いながら踏み出す一歩は、妙な圧迫感を持って押し留められる
これが…少しか
「普通のカテナなら破れまい」
そう、無表情のまま感心して返した言葉を銀の髪の青年はどう思ったろう
「コツを知ってれば簡単なんだよ?無理に進もうとせず、扉を探せばいいんだ」
抽象的過ぎる言葉に
そうかとだけ答え、もう一歩前に出る

こんどはすんなりと

微かな邪魔も入らずに

「…すごいね?」
「君が教えたんだろう?」
「それでも、あの説明ですんなりと結界を通ったのは君がはじめてだよ」
「それは光栄だ」
そこに居る事に、大した理由も用事もなかったから
「では邪魔したな」
「こちらこそ紛らわしい気配をさせてすまないね」
当然のことのように別れを告げた


「あ…」
真面目そうで、隙がない長身の青年が消えた後
銀の髪の青年は今気付いたとばかりに声を上げた
「名前くらい聞けばよかったなあ」

でもまあ良いか
彼とはまた会える気がした
もし予想が当たるのだとしたら、この場所で同じように

 

―――――

ヴィティス+カイン

降臨の日前に会っていたらこんな感じでしょうか
この2人が友人になったのは、降臨の日以降だと思ってたりします
しかもカインさんは元から交感能力が高そうだなとか(神々も、才能を伸ばす方が楽だろうし)
エテリアの結界の突破方法
こういう風に知ってても良いなとか
しかし名前が出てこない小話ですね

 

 

 


1人だと感じた
それは間違いなく事実のはず

優しく歌う歌声は金色に似た風をはらみ、彼女は小さく笑ったようだ
「やれやれ…どうしようね」
カインは苦笑を浮かべ、手の内にあるそれを眺めた
結構な大きさがあるのだから
それ相応の重量があるのかと思えば、羽根のようにそれは軽かった
少し休もうか
そうと下ろせば
卵は中空に留まり、また笑う
「君は…どうしたいのかな?」
つられるように笑って問い掛けても答えは返らない
それはそうか
まだ彼女は生まれていない

岩場に背をあずけカインは目を閉じた
微かにでも休まなければ、もし神々の追跡を受けた時に凌ぎきれないだろう
焦りは余裕を無くし
そうして判断すら鈍らせる
それだけは避けたかった
己も、神々の子も、こんな所で死ぬわけにはいかないのだから


「おい」

微かにまどろんで、意識が浮上しかけた時を狙い済ましたかのように
その声はかかった
敵意はない
だから焦りもしないまま目を開ける
「……うわ、気持ち悪い」
「何だその第一声は、失礼にも程があるぞ」
目の前で
まるで鏡映しのような光景が広がっていた
確かここは外で鏡なんてモノはなく……ああ、そういえばそもそも鏡は喋らないか
寝惚け半分の頭で考えて
もう一度目の前の青年を見る
薄い灰色じみた銀の髪、自分はこんな顔が出来たっけと思わせるほど不機嫌そうに顔は歪められ
仁王立ちよろしく佇んでいる
よく似ていた
でもたった一つ違う場所もある
髪と同色であるはずの瞳の色が、鮮やかな真紅だというだけだったが

「ええと、君は?」
何となく予想はついた
真紅には見覚えがあったし、間近にある雰囲気は馴染がある
「わしが知るか、わしはわしだ」
ふんと鼻を鳴らし
不機嫌そうに目をそらす
自分の姿での、その行動と言動は不気味ではあったが面白くもあった
「そうなんだ…たぶんだけど、レクスなんだろう?君は」
「そう呼ばれた事はある気がするな」

宿した真紅
自分を神々の呪いから解放したように
神々の一部であるはずのレクスすら、彼女は開放したのだろう

「なら話は簡単だね、力を貸して欲しい」
「何でわしが」
自分の手足のように使っいたレクスが言葉を話し意思を持つのは本来面倒な事かもしれない
だが好都合だとカインは笑う
これならば神々の影響を受ける事もないだろう
「彼女を守りたい……頼めないかな?」
エテリアを友とするように、その身に集め歌う卵
ゆるりと指差せば
真紅の瞳を細め、彼は微かに驚き笑ったらしかった

「……懐かしい声がする」
それは親の子守唄を耳にした子供のようで
「良かろう、手を貸してやる。ありがたく思えよ」
「ああ、ありがとう」
道具ではなく今日からは友として

「でもその姿は、止めてもらえないかな〜やっぱり気持ち悪いよ」
「そうか?動きやすいが」
「いやいや、戦う時は私が君を使うんだし……ああ、そうだ猫なんてどうだい?」
「猫?」
「すばやくてしなやかだ、それに君って猫っぽい気がするし」

提案に否はないのか
青年の姿をした不確定の生き物は
赤い赤い猫に姿を変えた
動きやすさを重視するためか、その背には本来猫にはない羽根がある

……このくらいが妥協ラインかなあ

自分が思うような猫じゃなかったけれど本人は満足しているようだから
何も言わない事にした

「ところでさ」
「まだあるのか」
「名前、何て呼べばいい?」
「知るか!」

 

 

―――――

カイン+トト

トトはどんな姿にもなれるそうなので、最初に模したのは使用者だと思うに一票
というか、最近色んな所で見かけたから自分でも
やってみたくなりました、ごめんなさい(遠い目)
トトって名前は
フィールかドロシーちゃんが付ければ良いとおもいます
カインはたぶん、代名詞か「レクス」って呼ぶのでは

 


 

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