はい、小説を読む前に少し注意していただきたい事があります。

面倒でしょうがサラリと目を通してやってください

これはストーリーには沿っているふうですが
例の戦いで「ルーミスが勝っていたら」のアナザーストーリーです。

つまりもう死にネタ大前提
どう考えてもハッピーエンドに落ちようがなさそうなお話なわけです(落とす努力はします)

そして思いっきりクレヴァニール×ルーミスです


以上を見た上で、勘弁してくださいと言う方はプラウザバックで平和な世界へお帰りください

大丈夫!!
どんな内容でも、気にしない!!という
拝みたくなるような素敵な方は、ずずいとスクロールしてください〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

許される事と、許されない事が世の中にあるなら


僕はきっと許されない

 

許されたいとすら……思わない

 

 

 

――夢乞い人・1――

 

 

 

 

ちらちらとまた降りはじめた雪は、風景を切り取った窓の向こうに色をつけている
北国であるこの地方特有の永遠に続くような銀世界
嫌な物ではないにしろ
温暖で穏やかな気候のデュルクハイムが懐かしい

「やれやれ、僕はこんなことをしたいわけじゃないんだけどな」
ルーミスは浅く溜息をつき、窓に向けていた視線を手元の種類へと移した
愚痴った所で何が始まるわけでもない
それならば、目の前にある書類を片付けたほうがいくらか建設的だろう
気を取り直し、内容を確認しようとした時

コン、コン

控えめなノックの音に続いてルーミスの返事を待たず扉が開かれた
不思議に思い顔を向ければ、立つのは見覚えのある人物
ああ、そう言えば
丁寧なのか、抜けているのか、紙一重の事をするのは彼くらいだった
怒る必要なんてあるわけも無く
ルーミスはふわりと笑う
「もう大丈夫なのかい?急に倒れるから心配していたんだ」
見覚えのある人物……クレヴァニールはバツが悪そうに頭をかいた
「ん、悪い。迷惑かけて」
「迷惑だなんてとんでもない。たいした事がなさそうで良かったよ」
それは紛れもない本心で
浮かぶ笑顔はひどく温かいものだ
だけれど
ルーミス自身気付いてはいないだろうに、瞳はほんの少しだけ淋しげだった

「もう…行くのかい?クレヴァニール」

彼が顔を出したという事はそういう事
バウアーに言付けて行くことも出来たのだから、直接会いに来てくれただけでも喜ぶべき事なのかもしれない
「うん、もう行く。仲間が待ってるし……やらなきゃならない事もあるから」
頷いてそう語る瞳には迷いは無くて
ルーミスは出かかった言葉を飲み込んだ
自分の我侭なんかで……彼という人間を縛りたくなんて無いのだから
「そう、じゃあ気をつけて」
笑ってそう答えたのに
まだ話したい事があるのかクレヴァニールは扉の前からルーミスの傍まで歩を進めた

「でも……」
机を挟んだ距離は大して遠くない
手を伸ばして髪に触れてくる青年をあ然としてみれば、赤い髪の青年は小さく笑ったようだった
続けられた言葉は耳を疑うような事
「全部やる事が終ったら、ルーミスの所へ帰って来るから」
「あ……」
声は出なかった
自分が言いたかった事を、そのまま代弁されたのだから当然だろう
答えを用意なんてしていないんだから即座に答える事なんて出来うるはずもない
髪に触れさせていた手を頬に移し、クレヴァニールは続ける

「そうしたら今度こそずっと一緒にいる」
「……」

真剣な眼差しでそう語る赤い髪の青年を見てできた事と言えば
手が温かいだとか、彼の声は聞いていて安心するだとか
言葉とは関係ないことを本能的に考える事だけで、言葉に対する応えは一つも浮かばない
そもそも
そんな風に言われたのは初めてなのだ
いい年をして……と思わなくは無かったが
遺跡にばかり興味を向けていたルーミスにしてみれば、当然の事かもしれなかった
しかもそれが
初めて出来た想い人から発せられた言葉なのだと思うと余計に混乱して
どう応えて良いのか分からない
「あ…あの、えーと……」
顔を真っ赤にしてオロオロするルーミスをどう思ったのか、彼はへらと緊張感の無い顔をして笑った


「約束」

 

そろそろ本当に行かないと…とクレヴァニールが手を振り出て行った扉を眺めルーミスは溜息をついた
優しい声と言葉だけを残して、離れた温もりが何故だか名残惜しい
「本当に…君って人は……」
戸惑って混乱していた自分が馬鹿みたいに思えた
自分のほうがずっと年上なんだから、もう少し気が聞いた答えを返せても良いだろうに
まあ彼は、そんな事微塵も気にしてはいないんだろうけど……

ひどく穏やかに、そして幸せそうにルーミスは笑う

「期待して待ってるよ」

そうやって待つ時間は淋しくはあるだろうけれど、きっと幸せなものだろう
口約束なんてものではあったけれど
クレヴァニールが口にした言葉が破られる事は無い、そう信じられた

 

そうして別れた後
過ぎた時は長かったのか、短かったのか
流れた時には血が染み付いて
振り返ることすら出来ないまま行き着いた果て

 

お互いを目の前にして何を思うのだろう

 

 

漂うのは血の匂い
抜き放たれたままの刀身は、切れ味鈍ることなく朱に濡れていた
広い広い砦の中
見ているものは同じモノではなくお互い
それだけの事が絶望的なまでに二人を隔てている

どうして、こうなってしまったのか

そう思ったのは果たしてどちらだったのだろう
答えをくれるものなど何一つ無く、開戦の合図とばかりに片方が口を開いた
「僕は、僕の理想とするデュルクハイムのために君達を……」
続く言葉に必要なのは決意か、それとも諦めか
「君達を倒すっ…!!」

「……ルー、ミス」
届かないだろうにクレヴァニールは名を口にする
言いたい事はいくつもあるのに、そのどれもが戦場と言うこの場所には酷く不釣合いだ
瞳を閉じ、自嘲気味に口元を綻ばせた
「俺は最低だ……」
「マスター?ど、どうかしたんですか?」
心配そうなユニには何も答えずクレヴァニールは真っ直ぐに倒すべき敵たちを見た
かつての友と
たぶん今でも優しいままであろう想い人

「あんな小さな約束ですら守れない」

まるで独り言であるかのような、小さな声はユニしか聞こえず
ユニに、その意味を問う事は出来なかった
いつも温和で戦争と言う場所には不釣合いまでに優しい己の主人が、酷く怒っているのが分かったから
何かに、誰かに向けるわけでもない
強い怒りのはずなのに、それは静かで
もしユニがマスターと繋がっていなければ気付かなかったかもしれない

「みんな、油断するなよ!手加減すればやられるのはこっちだ!!」
いつも通り的確に指示を下すクレヴァニールは一通りの指示を終えた後、もう一度階段の踊場を見た
厳しい顔のまま、後方の兵士に指示を出している空色の髪の青年

辛そうな顔をしたのは一瞬

無理矢理視線を目の前の兵士に向け、クレヴァニールは刀を構えた
油断なら無いと……そう言ったのは紛れもない彼自身だったのだから

 

戦闘は混戦を極めた
それも当然の話、智将と呼ぶに相応しいデュルクハイムの英雄と
たったの4人で常勝を誇るマーキュレイの英雄とが
全力を持ってぶつかるのだから
未来の歴史家達は、この戦いを貴重で素晴らしいものと語るのかもしれない
だけれど、それが悲劇だと気付く人間は何人いるのだろう


ルーミスは、カタカタと震える身体を誤魔化すように魔法を唱えた
長い戦いはまだ終らない
人数的に勝っているはずのこちらでさえ疲労の色が濃く見えた
たった4人である彼らが疲れないはずは無いのに
一人として欠けることなく立ち回る様は見事としか言いようが無いものだ
でも震えがくるのは彼らが恐ろしいんじゃない

彼が傷つくのが恐ろしかった
少しずつとは言え確実に朱に染まっていくその身体
その原因は間違いなく自分であるという事が怖くて身体が震えるのだ
「……しっかりしろ、ルーミス」
敵、なんだから
倒す、と言ったのは自分なんだから
この道を選んだのだって――――――――――――
「サイクルアップ…!」

まだ続くだろうと思われた、英雄同士の戦いが終ったのはひどく唐突
それこそルーミスが呪文を唱えて数分も立たぬうちだ

 

それを知らせたのは


どちらかの歓声なんかじゃなく


「いやあああああぁぁっ!!!!!!」

悲痛な少女の悲鳴だった

 

 


あ…と声を上げたのは誰だったのか
武器を振り下ろした者か、振り下ろされた者か……それとも別の人物か
身軽なはずの彼の動きを縫いとめるかのように
大きな斧が右肩から腹の辺りまでに楔を穿っていた
骨も関係が無かったのか、それはひどく簡単に食い込んだようにも見える
「クレヴァニールさんっ…!!!」
攻撃をすることすら忘れたのだろう、レムスはクレヴァニールに駆け寄る
しかし
誰も手を出す事はしない
英雄の死には、敬意を払うべきなのだから
何が起こったのか分からないかのように、クレヴァニールはただ立ち尽くし
自分の半身を切り落とそうとする刃を見ていた
「クレヴァニールさん!クレヴァニールさんっ!!」
「マスター!今フレーネさんが回復してくれますからっ…!!」
必死に名を呼ぶレムスとユニに、クレヴァニールは何かを口にしようとした
ごふりと最初に溢れたのは鮮血
それでもかすれた声で、彼は言葉を壊れかけた身体から紡ぎだす
「レム、ス……出来れば、降伏・してくれ」
冷静に考えれば、クレヴァニールという戦力を欠いて勝てる人数ではなかった
それにルーミスなら降伏した者を無下に扱うわけがないのだ

クレヴァニールの遺言めいた言葉に涙を零しながらレムスは首を左右に振る
「や、いやです!そんな…貴方が死ぬみたいな事聞きたくないっ…!!」
もう、立っていられないんだろう
壊れた人形のように、かくんと膝をつきクレヴァニールは地にふした
ヒエンが急いで助け起こしても
もう顔に色は無い
「フレーネさん!魔法はっ!?」
泣き叫ぶ使い魔にフレーネはただ泣くばかりで答える事は出来なかった
所詮は人間の治癒能力を高めるだけの回復魔法は、死を目の前にしたものには意味をなさない

魔法の効果が発揮されなくなった時

それが死というもの

浅い呼吸
ヒエンが支える背からだくだくと温かい赤の液体が流れ出しクレヴァニールという存在から体温を奪っていく
「ヒエ…ンさ…ん。俺達の…やるべき、は」
「もう言わずとも良い……。この戦いはもう終った」

山吹色の瞳を細め、クレヴァニールは嬉しそうに笑った
もしかしたら本当に嬉しかったのかもしれない、彼はあの人を手にかけず済んだのだから
今までありがとうと
囁くように告げられた言葉は仲間全てと、彼の命を奪う事となったバウアーに届いた
「クレヴァ…ニール」
思わず敵であるはずの彼の名を呼べば、死の鎌を振り下ろさせた者であるにも関わらず彼は笑った
「ばう、あー、レムスを…頼んだよ」
いつかの日、その言葉はバウアーの言ったもののはずだった
何も言わずバウアーは頷く
彼にはそれしか出来なかったから
血は止まらない
血は止まらない

血は赤いのに、泣きたくなるほどクレヴァニールの肌は白くなって

「それ…から、ルー、ミスに……――――」


ごめん……て伝えて


言葉は届かないまま、虚空に消えた


悲鳴のような泣き声と名を呼ぶ声
いくら呼んでも、もう彼は帰らない

 


「大佐、どうしますか?残りをせん滅するのは簡単そうですが……」
「……指揮官が死んだんだ、戦う意思は無いと思う。降伏するよう……言ってくれ」

傍らに来た兵は素直に下がり
ルーミスは階段の踊場から、その光景を今一度見下ろした
まるで全てが嘘であるようにアッサリと全てが終わった

「――――っ」

崩れ落ちそうになる身体をどうにか支え、泣き叫びそうになるのを唇を噛んで耐えた
自分にそんな権利なんて無い
「僕が…殺した」
手を下したのが誰であれ、指示を下したのは紛れもないルーミス自身
「僕が、彼を、殺したんだ」
信じられないと、信じたくないと騒ぐ心に言い聞かせるよう
ルーミスは何度も繰り返した

彼を中心に、赤い赤い血溜りが広がっている
彼の仲間達は皆泣いていた
あのバウアーですら、声を殺し肩を震わせて

泣く権利があるのは「奪われた」彼らであって
「奪った」僕じゃない

そんなこと

許されるはずが無い

自分にあるのは、奪った者として彼らに恨まれる責任くらいだ

ドンッ!
泣かないですむよう石造りの壁を力任せに叩きつける
何度も何度も何度も何度も
痛みがあったほうが、まだ正気でいられる気がした
ぽたりと拳から流れる血にルーミスは、どこかホッとしたように拳を下ろす

泣けない代わりに流せるモノがあったと思えたのかもしれない

 

 

失うものしかない戦場と言う名の舞台

退場したのは名も無き役者か、それとも主役か

知る者なんて居ないまま

それは静かに幕を下ろした

 

 

 

続く

 

□□□□□□□□□□
ゲームをした人間には分かる事ですが、主役退場です(オイ)
腰をすえて書こうと、しっかり続き物
誰が待ってなくても私が楽しい連載モノのスタートー!!おーいえー!!(壊)
まあゲーム本編では
クレが死んで仲間が全滅すればゲームオーバーなわけですが
もしそのままストーリーが進んだとしたらと思うわけです。
むしろルーミスにも大事な人を(直接的にしろ間接的にしろ)自分の手で殺す怖さとか悲しさとか
感じてみて欲しいと言うか

あの時、ルーミスは「命は惜しくは無い」って言ってましたけど
それは彼本人にとっての命であって、それ以外の人たちの認識って無いですよね
デュルクハイムどうこうが無かったとしたら
ルーミスは何の気負いも、後悔も無く自分の命を投げ出せそうで嫌です
本当なら
どんなことがあっても生きて居たいって、あがいて方法を探して
生きていられる所まで生きていくのが人であるんだろうに
そういう意味で考えて
ルーミスは、こちらが悲しくなるくらい純粋で綺麗な人ですね

そういう人間になれるとは思わないけど
そういう人間を守れるような人になりたいです

というか内容にそぐわないバックですね(汗)すいません


ではでは、長々とお付き合いありがとうございます!ここまで呼んでいただけて感謝の極みです(>_<)
よろしければ続きがアップされた暁は読んでくださいv


2004 12、10

 

 

 

 

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