気に入ったぜ、アンタ

そう隻眼の男は笑った


―月見酒―


日輪が姿を隠して暫く
篝火をかかげる陣営から離れ、闇に埋没するかのように凶王・石田三成は座り込んでいた
それは彼が豊臣軍を率いるようになってから常だ
勝利しようと
敗北しようと
今回のように同盟がなろうと、関係ない

彼は全てを拒絶し
崇拝する秀吉を乞い、家康をただただ憎む
暗闇の中で
抱くのはそれだけ

誰もが
そんな彼に声をかける事など出来なかった
声をかけたが最後、剣閃を冥土の土産にしなければならないと
確信すらしていたのだから

「よう」

そんな彼に
声をかける者があった
まさに今日、同盟がなった西海の鬼神と呼ばれる男
長曾我部元親

「……何の用だ」

地の底から響く呪詛にも似た三成の声に
大抵の者は怯えるが
元親はそんな様子もなく、三成の隣に腰を下ろす

「同盟がなったんだ。大将同士、酒を酌み交わすぐらい良いじゃねえか」
そう言いながら差し出される盃に
「……私は…別に……」
三成はどう対応すればいいのか分からぬといった風に視線を外した
だけれど元親は気にした様子もなく、その手に盃を持たせ酒を注ぐ

注がれてしまえば
慌てて零さぬように両手で盃を支える三成に、元親は声を殺し笑った


「……な、何だ…」
「いやいやいや、やっぱアンタ面白いな…と思ってよ」


自身の盃にも酒を注ぎ
人好きする笑みを浮かべて、微かに三成に掲げる様は乾杯の合図だろう

あっさりと飲み干す元親と
舐めるように口をつける三成

「ん?飲めないのか?」
なら悪かったなあ、そう言う元親に三成は首を横に振る
「飲めぬわけではない。ただ…余り得意じゃないだけだ」
「そうか?まあ無理はすんなよ、大して弱い酒じゃないからよ」
元親は再び注ぎ酒を煽る

「アンタ見てると、知り合いを思い出すな」
「知り合い?」
「あいつも真っ直ぐな眼をしていやがった。冷えて、残酷で、鋭利、誰よりも“目的”のみを追い求めて……」
「……喧嘩を売ってるのか」

元親は声を上げて笑う
「そういうとこも似てる」と、誠に愉快そうに

「別に喧嘩は売ってねえよ。ただ、ほっとけねえなって思うだけだ
四国の事もあるが、アンタのその眼に俺は同盟を確約する気になったんだからな」
「……ならば、その“知り合い”とやらとはどうなんだ。同盟はしているのか」

もしそうなら豊臣に従属させる
そう宣言する三成に
元親は目を細めた
「あいつは一人がいいんだと。ま、馬があわねえ同盟っても俺から願い下げだぜ」

肩を竦める様子がどこか残念そうだ、そう思いはしたが三成は追及する事はせず
なかなか減らない酒を口に含み咽へと流し込む

「ああ、月がのぼったな」

元親の声に視線を上げた先には、細い月

「……」

その月に元親は盃を向ける
そうして
わざと傾けて酒を地面へ注いだ

「…?何してる」
「この土地には俺の大事な奴らが眠ってる
いい酒なんだ。分けてやらねえとな」

隻眼に映るのは悲壮感
失った多くの仲間に哀悼を込め、四国の地に酒を飲ませる

まるで
それは鬼が流す涙のよう

「いい酒なのか」
「ああ…」
「なら、酒が分からぬ私が飲む必要はない」

盃に残る酒を
三成は元親に習うように地に流す

「貴様の仲間が飲めばいい」
「…………」

何を思い出したのか
辛そうに元親は顔を歪ませる
だがそれも一瞬の事

「ありがとうな」

力無く笑って
くしゃりと、三成の頭を撫でた


END


□□□□□
バサラ3やって初めて書いた小話。確かプレイ初日に書きますた……
一応三成の赤ルートでアニキが仲間になったトコです。
まだ親三にはなりきれない感じ
でも初プレイで三成選んで良かった…!アニキ仲間になる所、可愛かった…!!
でも微妙に毛利さんが話の内容に出て来たりします(笑)だって瀬戸内も好きだから……

 

 

 

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